以前の記事(Emacsのorg-modeで論文を書く(その1:pdfとhtmlへの出力))にも書いたが,Tufte−LaTeXなるものを愛用している.今回はこれについてもう少し詳しく書いてみたい.
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Tufte-LaTeX
- Edward R. Tufteによって作られたページレイアウトのためのlatex packageである.典型的には文章が左側に配置され,右側には広いマージンがありノート,文献,表,図などが配置されるスタイルである.
- さて,このスタイルが何の役に立つかというと,報告書の作成の際に図を入れたりするときに,latexのfloatを使うと案外思うところに挿入されないことがある.このスタイルだと,図は少し小さくなるが,きちんと横に納まってくれるのがよい.
- Tufte-LaTeXのサイトには,“the style of Edward R. Tufte and Richard Feynman"と書かれている.ん,と思って調べてみると,やはり,あの物理学者のファインマンのことであった.興味のある方は,The Feynman-Tufte Principleでググってみると面白いかもしれない.
- 以前の記事(LaTeXをインストールし,texファイルが変更されると,自動的にcompileしてskimでのpdfも自動で更新されるようにする(2018年9月1日追記))に書いたようにtexliveをインストールしてあれば,tufte-latexは一緒にインストールされているので,新たにインストールする必要はない.
tufte-org-mode
- tufte-org-modeは,上述のlatexのtufte classをorg-modeから使えるようにした有り難いパッケージである.このおかげでlatexの記法を意識することなく,org-modeで普通に文章を書いていき,最後に後述する如く,オマジナイを唱えればTufte styleのpdfができあがる.
設定
- 下記の2つの設定で使えるようになる.init.orgでの設定の順番はどちらが先でも動く.
tufte-org-modeのインストールと設定
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以下のようにinit.orgに書き込んで設定する.
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ox-tufte-latex.elは上記の tufte-org-modeからダウンロードしてローカルに置いてインストールしている.パスは各自の環境に合わせて変更していただきたい.
#+begin_src emacs-lisp (quelpa '(ox-tufte-latex :fetcher file :path "/path/to/ox-tufte-latex.el") ) (use-package ox-tufte-latex) #+end_src
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quelpaは,use-packageでうまくインストール出来ないときに重宝する.
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quelpaについては以下を参照
org-modeでtufte-latexの設定
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ox-latexの設定などは以前の記事(Emacsのorg-modeで論文を書く(その1:pdfとhtmlへの出力))に書いたようにinit.orgに記述しておく.
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以下のようにinit.orgに書き込んで設定する.これは以前の記事(Emacsのorg-modeで論文を書く(その1:pdfとhtmlへの出力))と重複するが,念のためにここにも書いておく.
#+begin_src emacs-lisp ;; tufte-handout class for writing classy handouts and papers (add-to-list 'org-latex-classes '("tufte-handout" "\\documentclass[twoside,nobib]{tufte-handout} [NO-DEFAULT-PACKAGES] \\usepackage{zxjatype} \\usepackage[hiragino-dx]{zxjafont}" ("\\section{%s}" . "\\section*{%s}") ("\\subsection{%s}" . "\\subsection*{%s}"))) ;; tufte-book class (add-to-list 'org-latex-classes '("tufte-book" "\\documentclass[twoside,nobib]{tufte-book} [NO-DEFAULT-PACKAGES] \\usepackage{zxjatype} \\usepackage[hiragino-dx]{zxjafont}" ("\\part{%s}" . "\\part*{%s}") ("\\chapter{%s}" . "\\chapter*{%s}") ("\\section{%s}" . "\\section*{%s}") ("\\subsection{%s}" . "\\subsection*{%s}") ("\\paragraph{%s}" . "\\paragraph*{%s}"))) #+end_src
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ここまでEmacsを設定した上で,orgで原稿を書き,C-c C-eと打てば,以下のような画面になる.
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ここで,l oと打つと普通(Tufte styleではない)のpdfがオープンされてしまう.
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Tufte styleのpdfを得るためには,T pと打って,Export to Tufte LaTeX の中からAs PDF file and openを選択しなければならない.これで,原稿が得られ,skimでオープンされる.
tufteの使用の実例
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それでは実例を示してみる.以下のような書類を作成し,Tufte_test.orgとして保存する.hoge_fuga.jpgなどの画像は全てTufte_test.orgファイルと同じdirectoryにあるものとする.
- 前半の#で始まる行が続く部分はorg-modeの設定であり,latexのこのパッケージを使うぞ,とか,org-modeのヘッダーをどの深さまで表示するかなどを決めている.詳細はググればすぐに分かるので略…..(^^;;;
- :offset -8inによって,図の位置を上にずらしてバランスをとるようにしているのにご注意いただきたい.
#+LaTeX_CLASS: tufte-handout #+LaTeX_CLASS_OPTIONS: [12pt] #+LATEX_HEADER: \usepackage{geometry} #+LATEX_HEADER: \geometry{left=0.6in,top=1in,bottom=1in} #+LaTeX_HEADER: \usepackage[sort,compress,super,comma]{natbib} #+STARTUP: overview #+STARTUP: hidestars #+OPTIONS: H:4 num:nil toc:nil \n:nil @:t ::t |:t ^:t -:t f:t *:t TeX:t LaTeX:t skip:nil d:nil todo:t pri:nil tags:not-in-toc #+LINK_UP: #+LINK_HOME: #+OPTIONS: author:nil date:nil #+begin_fullwidth \centering #+LATEX: \huge{\textbf{hoge/fugaによる相補的な治療における高難度症例の治療と成績}} \vspace{0.5cm}\\ #+LATEX: \normalsize{taipapa, 織田信長, 豊臣秀吉, 徳川家康}\\ \vspace{0.5cm}\\ #+LATEX: \normalsize{hogefuga大学大学院 hogefuga研究科 hogefuga分野} #+end_fullwidth * *背景と目的* hogeとfugaを比較し,治療成績を比較する. * *結果* まず,hogefugaの軽症例の画像を呈示する (*Fig. [[hoge_fuga2]]*). \vspace{0.25cm} そのころわたくしは、モリーオ市の博物局に勤めて居りました。 十八等官でしたから役所のなかでも、ずうっと下の方でしたし俸給もほんのわずかでしたが、受持ちが標本の採集や整理で生れ付き好きなことでしたから、わたくしは毎日ずいぶん愉快にはたらきました。殊にそのころ、モリーオ市では競馬場を植物園に拵え直すというので、その景色のいいまわりにアカシヤを植え込んだ広い地面が、切符売場や信号所の建物のついたまま、わたくしどもの役所の方へまわって来たものですから、わたくしはすぐ宿直という名前で月賦で買った小さな蓄音器と二十枚ばかりのレコードをもって、その番小屋にひとり住むことになりました。わたくしはそこの馬を置く場所に板で小さなしきいをつけて一疋の山羊を飼いました。毎朝その乳をしぼってつめたいパンをひたしてたべ、それから黒い革のかばんへすこしの書類や雑誌を入れ、靴もきれいにみがき、並木のポプラの影法師を大股にわたって市の役所へ出て行くのでした。 あのイーハトーヴォのすきとおった風、夏でも底に冷たさをもつ青いそら、うつくしい森で飾られたモリーオ市、郊外のぎらぎらひかる草の波。 またそのなかでいっしょになったたくさんのひとたち、ファゼーロとロザーロ、羊飼のミーロや、顔の赤いこどもたち、地主のテーモ、山猫博士のボーガント・デストゥパーゴなど、いまこの暗い巨きな石の建物のなかで考えていると、みんなむかし風のなつかしい青い幻燈のように思われます。では、わたくしはいつかの小さなみだしをつけながら、しずかにあの年のイーハトーヴォの五月から十月までを書きつけましょう。 \vspace{0.25cm} ついで,hogefugaの重症例の画像を呈示する (*Fig. [[hoge_fuga]]*). #+NAME: hoge_fuga2 #+caption: hoge-fuga(軽症例である) #+attr_latex: :float margin :width 2.8in :offset -8in #+attr_latex: :vertical-alignment t [[./hoge_fuga2.jpg]] #+NAME: hoge_fuga #+caption: hoge-fuga(重症例である) #+attr_latex: :float margin :width 2.8in :offset -2in #+attr_latex: :vertical-alignment t [[./hoge_fuga.jpg]] * *結論* hogefugaによる治療は有効である.
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ついで,前述のごとく,Emacsでこの文書を開いた状態で,C-c C-e T pと打てば,以下のようなpdfがskimで開かれる.
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上述のように,:offset の部分で図の位置を調整している.これなしだと,かなり下の方に位置してしまう.
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なかなか良い感じになっている.(^o^)
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今回は,Tufte styleの紹介であった.実は,このスタイルを手術所見を書くのに使用している.